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近年、日本の有料老人ホームや介護関連施設の数は増加し、内容も充実してきている。しかし高齢になれば要介護になるとは限らず、むしろ元気に毎日を過ごしている70代、80代の人たちのほうが多い。50代、60代のシニア予備軍も、そんなアクティブなセカンドライフを設計図に描いており、そこに生まれる新しい「アクティブシニア・コミュニティ」という概念に注目が集まっている。

「アクティブシニア」という言葉はもはや社会に定着したようだ。この言葉は団塊の世代を中核とする元気で活動的な人々を指している。
団塊の世代といわれる1947〜49年に生まれた人は全国に700万人弱いるが、2009年でそのすべてが60歳代になった。パワフルな六〇歳代が人口の15%近くを占めることになり、シニアマーケットも従来のそれとは異なる様相を呈している。
この世代は「1960年代のアイビールック、70年代のアンノン族、80年代のニューファミリーを形成してきた世代」(『知恵蔵2008』朝日新聞出版)であり、高度成長期の大量消費を経験し、さまざまなブームやヒット商品を生み出して日本経済を担い、新しい文化をつくってきた自負がある。
したがって好奇心が強く、いい意味で消費生活にも貪欲であり、一方でまだまだ働くことにも意欲的だ。こうした人びとがシニア年齢に達したことで、ハッピーリタイアメントは、穏やかな生活から精力的な活動、すなわちアクティブシニアのイメージへと塗り替えられつつある。

アクティブシニアは一人で行動することができる人たちだ。
もちろん実際には夫婦一緒だったり、友人同士でなかよく行動を共にすることが多いが、必要とあれば夫あるいは妻に依存することなく、能動的に意志決定し行動することができる。
これには日本のコミュニティのあり方が大きく変化したことが影響している。
日本の戸籍制度が家を単位とするものから、夫婦を基本単位とする戸籍に変わったのは62年前。三世代・四世代同居の大家族は激減し、今では子どもが成人したら夫婦二人の生活というのが当たり前だ。
平行して地域社会も大きく変わった。産業構造の変化、車の普及と流通経済の変化、情報社会などの要素が働いて、「むら社会」といわれた日本の共同社会すなわちコミュニティのしがらみは今はもうほとんどない。
代わって登場したのは、学校や会社、あるいは協同組合などが形成する職域コミュニティである。さらに同年代であるとか、趣味を同じくする者同士など、血縁や地縁とは異なる要素で結ばれるコミュニティが成立するようになった。
また、アクティブシニアは都市型セカンドライフ志向が強い。2012年の日本の65歳以上の推計人口は3,000万人近いが、このうちの四分の一が東京近郊在住者(上図)。
人口が東京に集中する時代を共にした世代はそのまま同地域に住み続けていく傾向を示しており、アクティブシニアが集まるアクティブシニア・コミュニティもこうした流れの中で発想されている。

アメリカ人は、子どもが成人すると夫婦二人の単位に戻り、仕事をリタイアした後は新たな土地に移住して、新たなコミュニティに入っていくという生活スタイルを好む。こうしたライフスタイルに応える共同社会として生まれたのがリタイアメントコミュニティとかアクティブアダルトコミュニティと呼ばれるものだ。
1960年にアメリカのアリゾナ州に建設されたサンシティはその典型で、砂漠の真ん中に人工都市をつくり、退職者の居住を誘致した。以後こうしたコミュニティづくりはフロリダやハワイも含め全米に広がり、サンシティも今では緑豊かな田園都市に成長、約四万人もの人口を迎え入れている。そして日本でも今、アクティブシニア・コミュニティが形成されようとしている。
リタイアメントは、人生の三分の一あるいはそれ以上の部分を占めていた勤労生活を卒業することだ。それまで属していた組織を離れることで一つの所属コミュニティも卒業することになる。もう一つの所属コミュニティは自宅のある「地域」であが、多くの男性にとって地域社会はなじみが薄い。女性でも子育て期間こそ地域に密着していたものの、共働きだったり、趣味のサークルに通っていると、地域のお付き合いより深い人間関係を、別のところで築いている。
また、アクティブシニアは働くことに生き甲斐や社会貢献の意義を見出してきた世代であり、仕事以外の娯楽にも熱心に取り組んできた。ゴルフでもジャズでも一つのことに打ち込んで研究したり練習したりするのが好きだ。定年後も働きたい、ボランティアで世の中の役に立ちたいと考える人も多いし、新しいことへのチャレンジ精神が旺盛だ。地縁でつながる地域コミュニティより精神面や行動スタイルを共有できる新しいコミュニティを求める動きが出てきたのはまさしく時代の要請である。次ページからは日本におけるアクティブシニア・コミュニティの動きを見ていこう。
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