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少子高齢化が急速に進む我が国では、高齢者介護の現場でさまざまな課題が顕在化している。そんな中で先進的な福祉政策を実践しているスウェーデンから日本に移住し、浦安市の舞浜倶楽部で総支配人として活動しているグスタフ・ストランデル氏と聖路加国際病院理事長の日野原重明氏の対談が行われた。

◆グスタフ・ストランデル
私は高校留学で日本に初めて来たんですが、それはほとんど剣道のために来たようなものでした。ホームステイをしながら日本語を勉強して。その時、日本という国がすごく気に入ったんです。その後、何度も行ったり来たりしましたが、日本に住むようになったきっかけは「人」ですね。学生や剣道の道場仲間、それに大学の先生方など、いい人にたくさん出会いました。
◆日野原重明
僕はFMT&Functionally Oriented Music Therapy=脳機能回復促進音楽療法)などスウェーデンの音楽療法にスウェーデンに行った時から注目していて、現在、2001年より日本音楽療法学会の理事長を務めています。長い間、心臓など内科の診療を幅広くやって、心身症を日本に紹介したり、いろいろなことをやっていくうちに、音楽療法はアルツハイマーにとてもいいということがわかったんです。それで今、盛んに音楽療法を取り入れています。また、スウェーデンといえば、札幌近郊の当別町にあるスウェーデンヒルズの街作りと、そこに併設されている財団法人スウェーデン交流センターの設立に関わりました。
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| 「スウェーデンのFMT脳機能回復促進音楽療法」(「欧米や日本の在来の音楽療法とはまったく異なるメソッドであり、耳からだけでなく、手足や頚の運動を通してユニークな音楽的刺激を与え、脳機能の回復をはかる療法です。」日野原推薦文)・春秋社刊 |
認知症のお年寄りで、自分の名前が書けない、ご主人の名前が言えないという人が、歌を歌わせるときちんとメロディーをとって、しかもそこに言葉が乗っていくんです。うまくコミュニケーションができない自閉症の子どもも一緒に音楽をプレイすると、だんだん二人の間に関係ができ、他の人ともコミュニケーションができるようになる。そして音楽的才能をはじめ、いろいろな才能が出てくるんです。
※日本音楽療法学会:1986年に日野原理事長が音楽の身体への働き掛けに着目し、「日本バイオミュージック研究会」を設立。2001年4月に臨床音楽療法協会と合併して「日本音楽療法学会」が発足した。現在、同学会認定の音楽療法士の国家資格化を目指している。
◆グスタフ・ストランデル
日本に来て外からスウェーデンを見るようになって、確かに自分の国には福祉の分野でユニークなところがあると気づきました。それで日本で参考になることを紹介したいという気持ちになりました。たとえばスウェーデンでは、知的障害者は当たり前のようにサービス産業で働けるんですが、こういうことは先進国の中でも少ないと思います。多くの場合、モノづくりとか作業所で働くことになるんですね。それから認知症の人が地域の中で普通の生活をしながら、家族と専門家がいっしょになってそのケアをする。これもスウェーデンでは始まったのが早かったと思います。
スウェーデンで、認知症の分野で確実に有効とされている手法のひとつが音楽療法です。音楽療法にはいろいろな流派がありますが、スウェーデンで少しずつ広まってきているのは、一緒に歌ったり手を叩くだけでなく、楽器も使う「ブンネ法」です。ギター、バイオリン、ベース、チャイムバー、笛など、誰でもできる楽器を使います。
◆日野原重明
僕はライヤー(竪琴の一種)を使っているんですよ。ドイツで買ってきたものです。
※ライアー:ライヤーとも呼ぶ。竪琴の一種で、アニメ映画「千と千尋の神隠し」の主題歌「いつも何度でも」を歌った木村弓が伴奏で仕様したことでも知られる。
◆グスタフ・ストランデル
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| 写真をクリックすると、演奏方法を表示。 |
ブンネ法で使う楽器は、まず触るだけできれいな音が出せます。簡単な操作で、誰でもだいたいできるんです。それと私たちの施設では誰かが指揮者をやります。指揮者も演奏者も全員認知症の方です。これをほとんど毎日やっていて、拍手と笑顔で終わります。
夏至祭というスウェーデンの夏祭りをやった時には、地域のみなさんや子どもたちも一緒になって参加しました。楽器まで演奏するというのは、今までの音楽療法ではあまりないんじゃないでしょうか。これをもっと日本で広げたいと思っています。
※ブンネ法:ステン・ブンネ氏が開発した認知症や知的障害者のための音楽療法。スウィングバーギター、ミニベース、単音フルートやチャイムバーなどのブンネ楽器を使用する。
◆日野原重明
先日、阪神・淡路大震災15周年の音楽リサイタルが神戸で開かれました。僕は講演者として招かれたのですが、レクチャーの前にホスピスで働くボランティアのためにつくった「愛のうた」という歌をみんなで歌いましょうということで、急に指揮をしてほしいと頼まれましてね。
それから10年前に、『葉っぱのフレディ』という絵本を僕がミュージカルにしたんですが、今年8月にはそれをニューヨークに持っていこうということで、今、募金を集めています。聖路加国際病院では、10階のホスピス病棟で音楽療法を行っています。音楽療法士が病室に出向いたりして一緒に音楽をしています。
◆グスタフ・ストランデル
日本でホスピスは、少しずつ認知されてきていますか?
◆日野原重明
現在(2010年2月)、病院の中にはパーリアティブ・ケア(緩和ケア)・ユニットが190施設ありますが、その他に独立したホスピスは4つか5つですね。その内私が理事長をしている財団法人ライフ・プランニング・センターが作った「ピースハウス病院」は、15年前に富士山がよく見えるゴルフ場の中につくったんです。そのオープニングのために僕が作曲をしたのが,、先日神戸で歌った歌なんです。
◆グスタフ・ストランデル
:医学はサイエンスというだけでなく、人間にタッチする、ヒューマンなパフォーマンスがありますよね。
◆日野原重明
だから音楽や詩は医学に親しいんですよ。アメリカのW・オスラー博士も、「Medicine is an art, based on science――医学はサイエンスに基礎をおくアートである」と言っていますね。
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