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グスタフ・ストランデル
(C)株式会社舞浜倶楽部
 認知症の分野で確実に有効とされているもうひとつの手法に「タクティール・ケア」があります。これはスウェーデンの看護師が、手で触れる本来の看護に戻ろうということで開発したものです。最近では、よりリラックス効果や信頼感、安心感を与える手の使い方が専門的に教えられています。これを日本で広めるために、2005年に日本スウェーデン福祉研究所ができまして、現在、受講者が3,000人ほどいます。

 スウェーデンではこの手法が、がんのケアにも使われていますが、日本では認知症の分野で、不安緩和の手法として広がってきていますね。舞浜倶楽部では、ブンネ法、タクティール・ケアのほか、排泄ケアも行っています。個人に合わせたスウェーデン式の排泄ケアは、世界的にも知られるものですので、ぜひ日本で発信していきたいですね。

 また、舞浜倶楽部のある浦安市の松崎秀樹市長が「浦安市はスウェーデンを超えられるのか」という運動を進めています。日本の自治体がスウェーデンを超えられるような福祉水準をつくれたら注目されるでしょう。それには全面的に協力したいと思っています。何よりも介護現場に希望をもたせたいんですね。社会福祉についての悩みが多い時代だからこそ、ここまでできるよ、ということを発信しないと希望が持てないのではないでしょうか。私は日野原先生と同じように100歳まで元気で生きていきたい。先生はいつ100歳になられるんですか?

日野原重明
 2011年の10月。もう少し先ですね。

グスタフ・ストランデル
 すごくお元気で肌がきれいで、たくましいなと思います。それが私にも希望になります。先日、介護現場で職員のための健康セミナーを開催したら、入居者が全員来たんです。専門的な内容だったのですが、こういうことはみなさん、70歳、80歳になっても、認知症になっても知りたいと思っている。それなら地域の多くの方も同じだろうと思います。

王立財団シルビアホ−ム:スウェ−デンのシルビア王妃の母上が認知症になった際に、王妃ご自身が介護された。そのご苦労から認知症に特別な対応ができる施設の必要性と専門的な知識を持ち対応できる人材の育成のために創設された。(C) 株式会社日本スウェーデン福祉研究所のホームページより
 スウェーデンの認知症ケアで一番先駆的なグループホーム「シルビアホーム」の理念は「Teaching for learning, Learning for teaching」――認知症の方から認知症介護を学ぶということ。要するに上からの目線ではなく、逆に認知症の方が先生にならないと実際にいいケアはできないということなんですね。緩和ケア理念はがんでも言われていますが、認知症ケアにも非常に参考になるのではないかと思います。
 以前、シルビアホームからシスターが3人、日本に来て、約1年半、北海道から沖縄まで毎週、講習会を開きました

日野原重明
資料を見せていただくと、本当に日本全国へ行かれていますね。

グスタフ・ストランデル
 その時に彼らがいつも驚いたのは、スウェーデンでは触れることによって安心感を与えると言いますけど、多くの日本の方は涙を流す。喜んで泣いてしまうのはスウェーデンでもなかなか見たことがない。つまりこれは多くの方が求めていることなのではないかということで、5年前から地域における研究センターを発足させました。それが今、日本全国で12ヶ所になっています。まず各施設の中で導入して、ある程度検証した上で地域の中で教えていくのですが、その日本初の研究センターが舞浜倶楽部でした。

日野原重明
 聖路加国際病院でもそういうところをつくりたいですね。退院する前に髪を洗って、きれいになって退院するとかね。今度、病院を改造する時にそういう施設をつくりたいと思っています。これは女性だけでなく男性にもいいんですよ。

グスタフ・ストランデル
私たちの認知症」幻冬舎メディアコンサルティン刊
 私たちの施設でも、優しく触れてもらう、あるいはきれいにしてもらうことに驚く男性が多いですね。これを始めたときに、日本人はそれほどスキンシップをしないからとよく言われたのですが、日本の方は、子どもと一緒に寝るし、お風呂にも入る。混浴の温泉もある。実は自然に触れ合う、スキンシップをすることが多い国じゃないかと思うんです。

日野原重明
 最近は「カンガルー療法」が注目されています。未熟児を病室のお母さんの布団の中に入れるんですが、これは親子の関係にとてもいいんですよ。精神科医の土居健郎さんが『「甘え」の構造』(弘文堂)という本に書いてますが、甘えというのは外国語にない、英語に訳せないそうです。

グスタフ・ストランデル
 私も読みました。欧米では子どもが小さい時から自立させるために親から離しますが、子どもとのふれあいは自立させなくていいんですよね。それと最近よく「機能訓練」という言葉が介護現場に入ってきます。音楽を聞いて、動かして、ふれあいをして楽しむというものです。

日野原重明
 パーキンソン病の人に夫婦でダンスをさせると、ダンスをしている間は筋肉がほぐれてスムーズに運動できるんですね。一人になると手が震えたり、コチコチになるけど、踊っている時は全体がしなやかになるんです

グスタフ・ストランデル
 好きではない方もいらっしゃるんですけど、抵抗がなければダンスはすごくいい機能訓練になると思います。

日野原重明
 医学はサイエンスに基礎を置きながら、日々の活動の中で直接、人間に触れるもの。そのためサイエンスでありながら、ヒューマンなパフォーマンスが求められます。サイエンスとしての医学とアートとしての音楽(療法)を中心に行われたこの対談は、医療や介護に従事している専門の方々だけでなく、日々、介護に携わっている方々にも示唆に富むものとなりました。いろいろと興味深いお話を聞かせていただきました。これからもグスタフさんの活動を応援しますよ。

グスタフ・ストランデル
 ありがとうございます。これを機会に日本とスウェーデンの交流がさらに深まればと思います。

2010.02.10掲載
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